開発者の想い

はじめに

みなさま、はじめまして。
防災トランプのサイトを閲覧頂きありがとうございます。
防災トランプの開発者、福本塁(ふくもとるい)と申します。
私の詳しいプロフィールはコチラのサイトや研究室サイトをご覧いただければ幸いです。
ここでは、防災トランプを開発するにあたっての想いを少し冗長になりますが語らせて頂きます。お時間あるときにお読みいただければ幸いです。

開発のきっかけとなる出来事

2011年3月11日に起きた、東日本大震災です。
私は幸いな事に怪我を負うこと無く直後を乗り切ることができました。
家族の無事を確認した当日の16時から、地域活動団体の安否確認、被災地衛生写真からの地図作成、原子力発電所ナビの開発、物資の調達・仕分け・配送と現地に行けない自分ができることは何だろうか?と自問自答しながらも思いつくことに取り組んできました。

ドクターヘリで南三陸町へ

AMDA・ノエビア・国際ロータリー第2780地区の合同プロジェクトで被災地医療支援のプロジェクトが発足し、私は現地医療チームのコーディネーターとして当月3月に南三陸町に現地入りし、救急医療活動に従事しました。

南三陸町の志津川小学校を拠点に活動し、まだ道が整備されていない時期であったため、
ドクターヘリで現地入りしました。雪が舞う上空からみた被災エリアの被害状況はニュースで聞くよりも広範囲に渡っていました。

目の前で運び出されるご遺体、必死に我慢している子ども、床ずれの痛みと戦う寝たきりの方。人の命を左右する場面で、自分のできることがあまりに小さく、それでもその小さいものを精一杯やり遂げなければという思いで活動しました。

そして、こうした災害が自分の住んでいる地域で起こったら?

そう自分に問いかけると震えがとまりませんでした。

現地支援ニーズを掘り出し復興支援活動

現地での救急医療活動を縁に、様々な方と知り合い、宮城県南三陸町と岩沼市の2拠点において現地の要望を掘り出し復興支援プロジェクトを発足させ活動を行いました。

  • パイプ椅子しかない仮設診療所の待合室に温かみのあるソファを提供
  • カルテを保管する棚や扇風機、害虫駆除グッズ等の提供
  • 水道不通エリアにおける河川や湧水、災害用井戸の水質検査
  • 津波でユニフォーム等が流されて試合に出られない・部活動ができない生徒への体育活動備品の提供

等、相談・縁のあった話は、めまぐるしく変わる現地の要望にいち早く対応できるよう
出来る限りスポンサーを事前に見つけておく等の工夫をし、迅速に動くよう努めました。

被災地で得た経験を自分の住む地域へ活かしたい

活動を続けて1年半が経過した頃、被災地のニーズも「まちをどうする?建物をどうする」といった、
ハード的な生活再建が主軸となり、徐々に一個人として支援できることや活動できることが限られてきました。
そろそろ自分の住む地域に焦点をあてて、いつ来るかわからない災害に備えたいと考えるようになりました。

防災サバイバル勉強会

はじめに思いついたことは「自分が得た経験や知識を伝えたい」でした。
災害時に活躍できる若者をターゲットに防災サバイバル勉強会を開催しました。
「自分の住む地域のハザードマップを携帯電話で見てみる。」
するとほとんどの参加者の携帯電話の画面が真っ白になりました。
これは多くの行政で公開されているハザードマップは細かいエリアを描写するため、
ファイルサイズの大きなものが多くあります。
携帯電話の回線で開くのには時間がかかるためです。
そのため災害が起きたときに安全な場所を探そうと検索しても、
アクセス集中時にはつながりにくい悪状況が考えられるため時間を無駄にしてしまう結果につながりやすいわけです。

こうした勉強会を行っていたのですが、私から一方的に情報を伝える形になってしまい、
自らの命を自ら助ける姿勢に寄与している手ごたえがありませんでした。
つまり、いいね、大事だねという声は聞けるものの、災害時や危険にであったときに
参加者の方がどのように行動するのかをまったくつかめずにいました。

防災訓練の意味

私たちがこれまで行ってきた防災訓練というのは、「誰かと一緒」「みんなで」という状況を
前提にした訓練がほとんどだったと思います。
でも、災害、例えば地震がいつ起こるかはわからないが、必ず起こるということは科学的にわかっています。
必ず何かしらの災害や危険にあうのであれば、「ひとりでいるとき」という状況は時間的に多くなるはずです。
もっというと、「自宅にいるとき」や「寝室で寝ているとき」、自分しかその状況を想定できないシーンというのが多くあります。
これって、今の防災訓練では対応できないのでは?という疑問が芽生えたわけです。

自宅で防災訓練したことがありますか?

そこで思いついたのが自宅での防災訓練です。
これまで12000人近くに「自宅で防災訓練したことがありますか?」と聞いてみましたが
YESと答えたのはわずか「50人」程です。
それはその通りで、仰々しい防災訓練を家で実施する気持ちにも、なかなか なりにくいと思います。

個人の生活目線で防災訓練を見直す

自分が良く知る場所やよくいる時間といった、ものすごく細かい状況を前提にした、
「もしも〇〇が起こったら」「どう行動するのか」ということを考える必要があると考えました。
自分の日常を舞台にすれば、全ての話が具体的になるので、漠然としたいわゆる一般的な知識を並べただけの防災の話に比べて、
はるかに防災意識が向上するきっかけになるのではないかと考えました。

2つの72時間

72時間というキーワードには2つの意味があります。
一つ目は、家屋倒壊時に巻き込まれた場合、救助されるまでの時間が72時間を越えると生存率が5%以下になります。
二つ目は、阪神淡路大震災の際、公的な救助が始まるまでの時間は4日目以降、つまり72時間かかっていました。
このキーワードが意味するところは、
災害時に助け合えるのは「自分」と「ご近所さん」だけということになります。
ご近所さんというのは、家の周りだけでなく、職場や学校、災害に巻き込まれたときにその場にいる人など様々です。
普段からこうした間柄の交流をきちんととっておくこと、そして初めて話す人でも必要なコミュニケーションがとれるようになることが
とても重要だと考えました。

生活目線で防災訓練を見直し、交流を促進できるものとして防災トランプ

これまで、
個人の生活目線で防災訓練を見直すこと
普段からご近所さんとのコミュニケーションをとり、とれるようになっておくこと
の2つが災害時から自分の命を助けるための姿勢として、とても重要な要素になると話しました。

世代を越えて人々が集い、上記2つを踏まえた場面を想像してみたとき、
イメージが湧いたのは「年末や休日等に家族でトランプを行うイメージ」でした。

自分の番は話をする番、相手の番は話を聞く番。
トランプを楽しみながら、話し手と聞き手が交互に入れ替わる場づくり。

毎日じゃなくても、日々の出来事を家族に話ながら様々なあそび方のトランプを楽しむ。
そうしたコミュニケーションが可能な場をつくりだすツールとして防災トランプが産まれました。